とりす歯科矯正
― 患者さんへの接し方で気を付けていることはありますか
一番大事なのは、信頼関係ですね。思いやりや気遣いがないといい関係は築けない。患者さんができるだけ話しやすいように気を付けるのももちろんですが、気づいてあげなきゃいけない部分を逃さないようにすることが重要で、課題でもありますね。
― 抜歯と非抜歯に関する考え方を教えてください
まず、日本人は8割近くが抜歯で対応するケースであり、白人種は非抜歯で対応出来るケースが多いのは何故かというと、黄色人種と白人種に解剖学上決定的な違いがあるんですね。アフリカに類人猿がいたというのが一番強い説ですが、そこから枝分かれして、ヨーロッパ大陸に行ったのとアフリカに残ったのと、アジアに行ったのといる訳です。そこで環境に応じた変化をするのですが、寒いヨーロッパでは穀物ができないため狩猟民族であった。それで肉を食べるのに適した歯、つまり小さくて根が深くて溝が深い歯となったんです。これが白人系の祖先。アジアは温暖で穀物を作って食べるので臼状の歯、つまり大きくて根が短くて溝が浅い歯になっていったんですね。これが黄色人種の祖先です。
やがて火を使って調理するようになって、繊維質のものが柔らかくなり、噛むことに対する負担が軽減されると、側頭筋が発達していて脳が小さかった原始人の筋肉は退化し骨も小さくなった。その代わりに脳が大きくなってきた。進化的退化と言われています。
しかし、歯の大きさというのは、原始時代から変わっていないんです。昔は親知らずまで綺麗に並んでいたのが、歯を支える周りの筋肉や骨が小さくなったら、アジア系の大きな歯がはみ出すのは当たり前なんですね。
ここは鎌倉が近いので、鎌倉時代の遺跡や頭蓋の発掘現場に立ち会う機会があったんですが、もうその時代ですでに歯と顎のバランスが崩れていました。いったいいつ頃から崩れ始めたのか明確になっていませんが、少なくとも百年単位の問題じゃない、何万年という進化の中でのことなんですね。だから固いものを食べたら顎が発達して歯並びがよくなるか、なんてそういう問題じゃないんです。長い歴史の中で変化してきたことですからね。
非抜歯で歯を並べても口は無意識下では開いているんです。特に寝ている時に口が開いていると菌のバランスをとるのに重要な役割をする唾液が乾いて、歯周病や虫歯を防げなくなってしまう。口腔というのは、生体の一部の器官であるので、口腔の環境を安定させるということは生体の安定にも影響している。全身の健康のためにも抜歯して矯正するということは大事なことなんです。